ワクは26歳で今の職場に就職した。社会人として遅い出発だ。
その時のボスは女性で32年間その座に就いた歴史的な人物だった。
ワクはこのおばあちゃんボスから仕事の姿勢のすべてを学んだ。
このワクにとっての初代のボスは引退する際に
慣例に大きく反する形でワクを引き立てて去った。
そのおかげでワクの辛い苦しい40代が始まる。
引退して5年後にボスは亡くなるのだが
その弔辞の役がワクに回って来た。
ワクはありがたくその役を引き受けた。
ワクが40歳の時にやって来た次のボスはワクの母親と同じ年だ。
ワクと二回り違いの昭和10年生まれ。おしゃれで恰好いい男性だ。
昭和10年生まれにして大学はカナダの大学を出て
そのあとヨーロッパで15年を過ごした人物だ。
名家の生まれ。「人は自分に仕えるもの」そう信じている。
たいていこういうタイプの人間は人から嫌われるのだが
「ぜひこの人に仕えたい」とまわりを思わせる人物だった。
やはり生まれの良さと受けた教育の質(帝王学?)と
もともともっている本人の人間の大きさなのだろう。
癌を患って4年になる。そのつど再起してきた。
いつもポジティブ。前に進むことしか考えてない。
そのボスが10月にホスピスに入り今日は危篤の知らせ。
ワクが駆けつけると閉じた目を開き手を握ってワクを見つめてくれた。
さすが。ワクのボスだ。ワクの自慢のボスなのだ。すごいぜ。いぇい~!